释义 |
ず〘助動〙[ざら|ざり|○|ざる|ざれ|ざれ]活用語の未然形に付き、断定的な否定判断を表す。ない。ぬ。→ざり →ぬ「あらたまの年の緒長く逢はざれど異けしき心を我が思もはなくに」〈万・三七七五〉「おろかにそ我は思ひし乎布をふの浦の荒磯の巡り見れど飽かずけり」〈万・四〇四九〉「風波やまねば、なほ同じ所にあり」〈土佐〉「誰もいまだ都なれぬほどにて、え見つけず」〈更級〉補説 「ず」の活用は「ず」の系列「(ず)・ず・ず・〇・〇・〇」と、「ぬ」の系列「(な)・(に)・〇・ぬ・ね・〇」とからなるが、さらにその不備を補うため、連用形「ず」に動詞「あり」の付いた「ずあり」の音変化形「ざり」系列「ざら・ざり・〇・ざる・ざれ・ざれ」が生じた。未然形「な」と連用形「に」は奈良時代に用いられたが、「ず」は、この「に」に動詞「す」が付いて成立したものという。「な」は、接尾語「く」の付いた「なく」の形で後世にも用いられた。また、中世以降、終止形は「ず」に代わり「ぬ」が用いられるようになり、未然形「ず」は室町時代以降「ずば」の形で用いられた。なお、現代では、連用形「ず」は中止法として主に書き言葉で用いられ、終止形は「べからず」の形で禁止の意を表すのに用いられる。 |