編者のことば
国際化、電子化が、急速に進んでいる。国際化、電子化についてはいろいろなご意見もあるだろうが、あらがえない時の流れであり、また、私たちは多大な恩恵を被っている。ともかく、新しい時代においても変わらず重要なのは、ことばの力、中でも、語彙の力である。新しい時代に力強く生きてゆくためには、ことばを適切に使う能力を身につけることが大切だ。それには、辞書を愛用して、語彙力を養うことである。
明鏡国語辞典は、そういうことを意識して編集し、改訂を重ねてきた。初版から高い評価をいただき、第二版も好評をいただいたが、今般、さらに上を目指して改訂を行うこととした。以下に、改訂第三版の特色の一部を紹介する。
一、紙面デザインを一新し、二色刷りにして、知りたいことを探しやすくした。重要語は意味の近いものどうしを並べて「仕切り」を入れ、調べやすくした。新語や、近年新しく使われるようになった意味には、〔新〕のマークを表示し、また、用例を見つけやすくするためのマークを入れた。
二、誤用と正しい使い方についての詳しい解説は初版以来の特色であるが、新しい項目を加え、また解説を一層充実させた。これも大きな特色である。
三、新しく「品格」欄を設け、改まった場面で使えることばを用例を添えて列挙した。この欄は語彙力増強に役立つことが期待される。
四、「書き分け」欄を新設して、たとえば、「開く・空く・明く」など、どういう意味のときにどの漢字を使うか、同音異義の漢字について解説した。
五、同様に、「読み分け」欄を新設して、たとえば、「注ぐ(つぐ・そそぐ)」、「帰す(かえす・きす)」など、同じ漢字で意味が似ているものや、読み間違えそうなものの読み分けを示した。
六、新しいコラム「ことば比べ」と「ことば探究」を新設して、「ことば比べ」では、たとえば、「釜(かま)」 「窯(かま)」 「竈(かまど)」など、日本文化に関わることばを比較して解説した。
七、そして、「ことば探究」では、たとえば、「いぶかる」 「かつて」 「すこぶる」など、文学作品でよく見られることばの使い方を解説した。
八、最新のことば、たとえば、「SDGs」 「食品ロス」など時代を反映する語や、「サブスク」 「キャッシュレス」 「睡眠負債」といった生活に密着した語、「エモい」 「いけボ」 「ほぼほぼ」などの新語をはじめ、多方面にわたる語、約三五〇〇語を増補した。
九、巻末付録に、敬語、接続詞、挨拶のことば、手紙の書き方、季節のことばなどをまとめた。
十、第二版で好評だった索引を、第三版では本体に組み込んで新たに編集した。そして、誤用、気になることばの使い方、品格語、どこを引いたらよいか分からないことば等々から引ける「明鏡 利活用索引」、アルファベットから引ける「アルファベット索引」、読み方が難しい漢字の画数から引ける「難読語索引」の三種類構成とし、充実させた。
少し細かくなったが、特色は他にもたくさんある。この第三版は、新しいもう一冊の辞書を編集するような気持ちで、渾身の力を込めて改訂した。どうぞ手にとってご覧ください。特長がご理解いただけると思う。
令和二年九月
鏡郷文庫主人
北原 保雄