[副助](ワと発音する)❶《名詞(相当語)に直接に付いて》文で述べようとする事柄を、「…について言えば」といった気持ちで話題としてとりたて、それについての説明を導く。「彼は江戸っ子だ」「今日は日差しが穏やかだ」「日本は地震が多い」「社長は出かけております」「彼女は何をしているのだろう」「行くのはいやだ」「賛成かどうかは分からない」使い方⑴「主題」 「題目」などと呼ばれる用法。文全体の話題を示す性質をもつことから、「は」のかかる範囲は、連体節や条件節などには収まらない。このため、「太郎が持ってきた小説を読む」では、読む人は太郎とは限らないが、「太郎は持ってきた小説を読む」では、読む人は太郎に限られる。⑵「先生にはますますご健勝の由」 「彼とは三〇年来の交際だ」 「株にまでは手を出していない」のように、助詞を介して名詞(相当語)に付くものもある。⑶②以下を含めて、一般的に「は」は、新たに付け加える説明の前提となる部分を示す。この点から、「は」の付いた部分は「旧情報」 「既知の事柄」を表すとも言われる。したがって、新しい情報を要求する、「誰」や「何」 「どこ」などには「は」が直接付くことはない。「何はなくとも」 「何はともあれ」 「誰はさしおいても」などの固定的な言い回しの場合や、「誰は何、何はどこ、と一方的に決められた」などの「誰」は、新しい情報を要求するものではない。 ❷《名詞、名詞+格助詞、副詞、活用語の連用形(+接続助詞「て」)などに付いて》同類の事柄が話題としてとりたてられることを前提にして、それと対比的な事柄を示す。「声は聞こえるが、姿は見えない」「東京には行ったが、横浜には行っていない」「ゆっくりとは読めるが、すらすらとは読めない」「聞こえはしても、見えはしない」「見てはいるが、聞いてはいない」使い方⑴「対比」と呼ばれる用法。話題を対比的に示すとともに、「は」のあとに示される事柄の及ぶ範囲を限定する機能を持つ。「英語をすらすらとは読めない」は、英語が読めないのではなく、「すらすらと」という範囲について「読めない」ことを表す。対比の前提となる事柄が不明確であったり、通常の様子であったりすると、③の限定や強調を表すようになる。⑵「は」のかかる範囲は、①とは異なり、「ゆっくりとは読めても、すらすらとは読めない小説」のように、連体節や条件節内にとどまることもある。⑶対比されるものが言外に示されることも多い。「子供には無理だ」が〈大人にはできる〉意を、「大阪までは行ける」が〈大阪から先は行けない〉意を、「普段はいい子なのに」が〈今日は悪い子だ〉などの意を含むなど。⑷「花は桜木、人は武士」や「男は度胸、女は愛嬌」など、修辞的な言い方で、対句の形で複数のものを話題にして、対比的に取り合わせを表すものもある。 ❸《名詞、名詞+格助詞、副詞、活用語の連用形(+接続助詞「て」)などに付いて》事柄の範囲や程度をとりたてて、それと限定したり、その範囲をことさらに強調したりする。「(大いにではないにしても)少しは懲りたろう」「多少は気になる」「読んではみた(がよく分からなかった)」「まさか怪しんだり(=怪しむなど極端なこと)はしないだろう」「決して逃げはしない(=最低逃げるようなことだけはしない)」❹《活用語の連体形+「の」、名詞(+なの)に付いて、「AのはBだ」 「A(なの)はBだ」の形で》説明にあたる部分を前提して「…は」で示し、述部で説明される部分をこれだと指し示す。「一番早く来たのは太郎だ」「クラス委員(なの)は私です」「日直は誰ですか」使い方「太郎が一番早く来た(のだ)」 「私がクラス委員です」 「誰が日直ですか」のように、説明されるものを「が」で、説明の部分を述部で示す文に置き換えられる。「太郎は学生だ(①の意)」は、太郎について、学生だという説明を加えるものだが、「学生は太郎だ(=太郎が学生だ)」は、ある範囲から学生に合うものを探して、それは太郎だと説明することを表す。
❺《時や場所など、場面を表す語に付いて》後のさらに細かな場面設定を導く。「時は元禄一四年」「江戸は神田の生まれよ」「芸大は美術の出身」❻《「A(なこと)はAだが」 「AするにはAしたが」などの形で》考えてみればそれに違いないということを確認して、逆接の関係で下に続ける。「そりゃ、迷惑なことは迷惑だけど…」「安いことは安いが、質が悪い」「ダイヤはダイヤでも傷物だ」「勝つには勝ったが、それほどうれしくない」❼《名詞に直接に付いて、「AはA(だ)」の形で》それ以外の何ものでもないことを確認する気持ちで(強調して)いう。「少額でも盗みは盗みだ」「元気とはいえ老人は老人だからね」「捜しても無駄だ、無いものは無い」「ならぬものはならぬ」❽《「AはAで」 「AはAとして」の形で》本筋から外れるがという含みで、立場や事情をそれなりに考慮していう。「彼は彼で言い分があろう」「明日は明日で法事があるんだ」「違反は違反として徹底追及する」「それはそれで十分に納得がいく」